ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『しあわせのはなし』歩田川和果

三十年生きて、そのうちの二十四年、人生の五分の四、片想いしている。
はじめての告白は、高校生のとき。
その後も二回失敗したが、俺はいつもしあわせだった。
佳久がずっと好きだ。
なのに、佳久を傷つけた。
体に残った傷痕は、どれだけ佳久を傷つけたかの証。
だって俺は、佳久の弟と関係を持ったんだから……。
ぜんぶ俺が悪い。
だから──今度は間違えない。

最高級のヘタレ、見参!
誰よりも純粋な想いを貫く男、環の純愛物語!!

収録作品:「しあわせのはなし」「(描き下ろし)しあわせのはなし おまけ」、あとがき、デジタル版オマケ漫画「仕事場で」(16ページ)

感想:

『ねくたいや』でいい感じに引っ掻き回してくれた仕立て屋の御曹司・環と、彼を「3回振った」有働家の長男 ・佳久のお話です。表紙からして好みです。ちなみにこれ一冊でも読めなくはないですが、前提として彼らの拗れ切った関係を知るためシリーズ前作『ねくたいや』を読んでから手に取った方が良いかと。

個人的には『ねくたいや』よりこっちのほうがツボでした。子どもの頃から意識しあっていたのに素直になれなず、そのうち仕事や家や変なプライドなど背負うものがどんどん増えて身動き取れなくなった30男のくたびれた色気と年甲斐のない子どもっぽさ。堪りません。

環は環でたいへんなヘタレですが。佳久も佳久でたいへんな頑固者。そのくせ頑固に拒む割に腹をくくればあっさりしていて、何かと蹴りを入れてくるところなど、有働家の長男次男は性格がよく似ているなと思いました。三男だけは、ちょっと健やかかも。

今回有働家の次男三男(そして永瀬)、環の家で長く働く悠さんといったキャラクターが傍から懸命にサポートしてくれます。登場人物が増えた分ちょっと慌ただしい雰囲気はありますが、お話も絵(描き分け)もぎりぎりコントロールできていたかと。前作でかなり気になった吹き出しの位置問題は、やや軽減したもののまだ残っていたのでちょっと残念。せっかくのテンポ良い会話の流れが悪くなる気がするんだけどな〜、

若者の青臭い恋愛も微笑まいですが、これくらい年季の入ったお話にはまた違う魅力があると思い知らせてくれる一冊。ちなみに「happiness 4(第4話)」の扉絵で有働3兄弟全員から不審者扱いされる環の図が可愛くて、萌え転がったので是非この気持ちを他の方にも味わっていただきたいところです。環、一見色男なのになんてヘタレで不憫なんだ!(そこが魅力です)

 

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