ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『風待ち休暇』里つばめ

山岡がやさぐれた気分を吹き飛ばすために訪れた離島は、青い空と白い砂浜、豊かな緑が広がる最高のオアシスだった。でも、そこで出会った年下の島民のアキラだけが山岡を苛立たせる。軽いノリと馴れ馴れしい態度にイライラさせられ、何より観光客の女にモテまくることが気にくわない。それなのに、なぜかアキラは山岡に懐いてくる。さらに「この島で暮らさない?」と誘われて……?

収録作品:「風待ち休暇」「加賀英明の少し特殊な日常」「春を待たずに」「壁越しに住む人」「晴れた休み明けに」

感想:

爽やかな短編集です。『GAPS』の毒っ気に魅せられたわたしには少しパンチは足りませんでしたが、楽しく読みました。

  • 「風待ち休暇」(+「晴れた休み明けに」):くたびれたリーマン(リストラ無職パチンコ三昧)が気分転換に出かけた島で出会った自然体かつリア充な青年に反感を抱きながらも徐々に惹かれていきます。山岡が割とダメ男かつ性格的にもネガティブなのが良し。自然体ゆえに強引で一本気なアキラにぐいぐいこられる山岡をもうちょっと見たいよーと思っていたので描き下ろしは嬉しかったです。
  • 「加賀英明の少し特殊な日常」:堅物真面目でピュアなリーマンが初恋に落ちるコメディ寄りのかわいいお話。恋愛マニュアルを読んでは紹介してもらった女性とのデートに失敗している加賀が、宮坂の押しと、はじめて感じる「ただ一緒にいて楽しい」という気持ちにぐらぐらしていく過程が楽しい。
  • 「春を待たずに」:「内定が取れたら先輩に告白しよう」と決めている就活生が、しかしなかなかうまくいかずに焦る話。片思いと就活の焦りの相乗効果でどんどん悪い方に転がってしまう主人公と、先輩の包容力にほのぼのさせられます。恋愛としてはまだ入り口未満で終わってしまう話ですが、これやっぱ先輩が攻なのかな、等々妄想は膨らみます。
  • 「壁越しに住む人」:騒音に苦情を言ったのをきっかけに隣人と親しくなる浪人生。隣人の正体についてちょっとスリリングな要素もありつつ、片思い未満のかわいいお話です。

ほぼ全作品が恋愛(もしくは片思い)がはじまるまでを描いたお話なので、さわやかな気分になれる一方寸止め感は半端ないです。基本あってもキスまでで、描き下ろしでちょっとだけ色っぽい場面があるくらいかな。

 

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