ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『優男とサディスティック』秀良子

地味リーマンのストーカーはイケメン変態王子!? エロスな大人の恋愛寓話。地味で普通なサラリーマンの高瀬。そんな彼を24時間つけまわすストーカーが現れた!! そいつはなんと、高校時代に高瀬をイジメまくった同級生・吉野だった。正体を知り、怒りを爆発させる高瀬の前で、吉野は突然土下座!! さらに「好きです!」と告白してきて!? 

収録作品:「この世の果てまでアイラブユー」「犬と神様」「シーソーゲーム」「(描き下ろし)優男とサディスティック(エピローグ)」、あとがき、「(電子限定描き下ろし)犬のいる生活(4ページマンガ)」、カバー下(あとがきマンガ、イラスト)

感想: 

重さと痛々しさのある関係を、飄々と、かつコミカルに描く秀良子さん。本作は、高校時代に自分をいじめていた元同級生に執着されるサラリーマンが主人公。一冊すべてシリーズで構成されています。

好きだからいじめたというか、いじめられている姿にきゅんとして好きになったというか。偶然の再会からのストーカー化含めて大概ひどいのですが、吉野はどうにも憎めないキャラです。高瀬はかつての復讐として自分のやられたのと同じこと(裸の写真を撮られる)を吉野にやりかえそうとするあたりから徐々におかしなことに。わだかまりのある2人が、多少ゆがんだかたちではあるものの、少しずつ和解して距離をつめていくのが微笑ましいです。一方的に執着されていたはずが、だんだんどっちが執着しているのだかわからなくなる、というわたし好みの展開がじっくり描き込まれていて満足です。

タイトル通り、多少サディスティックな描写はでてきます。高瀬はまず、吉野にやられたことをやりかえさずにはいられなかったし、奇妙な関係や感情への戸惑いをぶつけるさきも吉野しかいないので、そこで多少殴ったり縛ったりいたぶったり。そう激しい描写ではありませんが、苦手な方は要注意でしょうか。でも根本的には高瀬ってS属性ではないし、終始関係をコントロールしているのは吉野だったりして、最終的にはどこか不憫さの漂う高瀬が可愛いです。

表紙とタイトルこんなんですが、最終的にはラブで可愛いお話でよかった。

そういえばというか、全然作品とは関係ない話なのですが、電子書籍販売サイトはそろそろ「バラ売り除外」の検索メニューを作るべきではないでしょうか。電子先行の単話連載だけならともかく雑誌や既刊コミックスのバラ売りが増えすぎて、新刊チェックするのに、単行本で一気に読みたい派としてはこの上なく不便です。