ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『犬も喰わない』彩景でりこ

空木は探偵事務所に勤める調査員。大学教授・山代から、彼の妻の身辺調査を依頼される。すると、夫と同じ大学に勤める教授・奥園修治と浮気していることが判明。しかし、それは今回が初めてではなく、これまでにも二人は、「山代の愛した女性を奥園が寝取る」ということを何度も繰り返していた──…。複雑で歪んだ恋愛関係を続ける知的な男たち。そんな彼らの関係に、自ら身を投じる若い調査員。彩景でりこが描く、アダルトな三角関係の結末は…!? 

収録作品:「犬も喰わない」「写真」「告白」「(描き下ろし)骨」

感想:

これまで読んだ作品が、どちらかといえばハイテンションエロギャグっぽいものに偏っていたため、わたしにとって彩景さんのこの手の作風は新鮮。線の細い整った絵柄と、昏く乾いたお話はしっくりきます。おっさん2名と若者の三角関係というのも普段避けて通りたい系統なのですが、この作品はすごくよかったです。ただし最終的に割ともやもやしたオチになるので、恋愛関係ははっきりきっぱりかたがつかなきゃ気持ち悪い、という方にはあまりお勧めできません。空木の同僚の庄司と高校生バイトの茜(変態)のエピソードも、緩急つける意味ではよかったのではないかと。

おっさんになった山代と奥園の関係性もたまらなく色っぽいですが、学生時代の制服姿がたまりません。ブレザーに、首元にタイでなくリボンというのがちょっとクラシックでお坊ちゃんぽい潔癖さがあり、よかったです。広島弁アホアホ男子校生もいいけど、彩景さんのこういう学生ものも読んでみたいです。

併録の「写真」「告白」も、仄暗いお話。全体として「おっさん」「長年引きずったむくれわない恋愛」「暗め」が大丈夫な方にはおすすめです。逆にダメな人には激しく地雷になってしまうのかな。エロは多少あり、描写は激しくないですが色気は感じます。