ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『ココロニイツモ』たうみまゆ

商店街の片隅に建つ中古レコード店・きつね屋。そこには店長の東海林と、彼に拾われた青年・タイが暮らしている。タイには拾われる以前の記憶が一切ないかわりに、一度聴いた旋律は忘れないという能力があった。生活力が低くあぶなっかしいタイの世話を東海林はマメに見ているが、二人の関係は店長と店員、それ以上でも以下でもない。だが近頃タイは、東海林に触れていると胸がくすぐったいような気持ちになる自分に気づき……? 

収録作品:「ココロニイツモ」「(描き下ろし)bonus track」、あとがき

感想:

下町人情話+恋を初めて知る青年。全体的には好みなのですが、いかんせん部分的にものすごく荒っぽいので全体のバランスとしては微妙です。タイちゃんの音楽に関する特殊能力がストーリー上重要な役割を担ってしまっている以上、ただのほのぼの下町恋物語で終わらせるのは難しかったのだと思います。が、が、が、後半の超展開に呆気にとられてしまい、せめてもう少し丁寧に話を繋いでくれていたらと残念な気持ちが拭いきれません。

SFというほどではありませんが、タイちゃんの記憶喪失(+精神年齢の低さ)に絡んで非現実的な設定が入り込んできます。タイちゃん自身については当初からミステリアスな背景が匂わされており、ほのぼのとした商店街の風景の中でそれが徐々に明らかにされていくのがストーリー上の中心的な流れになります。が、タイちゃんの背景が明らかになって以降の展開(というかそもそも「背景」そのものも)が雑で、商店街エピソードの細やかさと比べるとかなりの違和感がありました。

商店街の人たちの、仲良くわいわいやっている感じはとても良くて、特にタイちゃんと恋のライバルになりかけてしまったさとこちゃん(ママに「30路で自衛の独身女はほぼ男」と言われてしまう不憫さ含め)は実に魅力的なキャラクターでした。これからも皆さん仲良く幸せに暮らしていくのでしょう。

 

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