ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『視線の刻印〜恋に堕とされて〜』花川戸菖蒲(表紙イラスト:みずかねりょう)

 

視線の刻印?恋に堕とされて? (カクテルキスノベルス)

視線の刻印?恋に堕とされて? (カクテルキスノベルス)

 

化粧品会社のエリート営業・草介は、社食で一目惚れしたイケメンを眺めるのが癒しの自称「タチ」。ある日、「いつも俺のことを見ているでしょう」と声をかけられ!?その研究開発部のイケメン樫原と、お付き合いのような関係が始まる。真面目な印象の樫原は気もきいて、時々意地悪な眼差しで翻弄してくる。想いが実りいよいよベッドへ…と気持ちも昂ぶる草介。けれどいざベッドに入ると、草介はなぜか押し倒されて!!タチの筈が、まるで従順な犬への調教を受けてしまい!?―。 

収録作品:「視線の刻印〜恋に堕とされて〜」、あとがき、(本文挿絵なし)

感想:

悪くはないのですが、可もなく不可もなくといったところでしょうか。設定も文章もそつなくまとまってはいるものの、あらすじから期待したほどの盛り上がりがなく、ちょっと拍子抜け。

化粧品営業の草介と、同じ会社の研究開発担当・樫原。美人な樫原に目をつけているつもりで、実は逆に目をつけられている草介が、知らぬうちに籠絡され調教されていく展開自体は好み。好人物に見えて腹黒い攻、健気で頑張り屋でちょっと抜けている受、これもツボ。しかし、2人のやりとりがあまりにもわかりやすすぎるんですよね。行動だけ見ても樫原の狙いがあからさますぎて、この展開で、いざベッドで向かい合うまで草介が自分がタチだと疑ってもみなかったというのは、さすがに無理があるのではないでしょうか。そしてせっかくの調教ものなのに、躾に関するやりとりや、ベッドシーンが薄味。さらに、ぶつ切りの結末。設定も登場人物も好みだっただけに、もう少し丁寧なお話が読みたかったのが正直なところです。タイトルの耽美さとは裏腹に、樫原がやや変態っぽい点を除いてはごくごく普通のリーマンBLで、そういった意味でのバランスもあまり良くないように思いました。

文章自体への違和感はありませんし、展開については好みの要素が大きいだけに、はまる作品ははまりそうな気がするのですが……。次はもう少し吟味して、当たりを引くことを期待したい作家さんです。