ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『犬と小説家と妄想癖』高遠琉加(イラスト:金ひかる)

 

犬と小説家と妄想癖 (ガッシュ文庫)

犬と小説家と妄想癖 (ガッシュ文庫)

 

真面目な数学教師・鮎川は、官能小説家の親友・不破の仕事を手伝うことになる。自分を庇って利き腕を骨折した不破に口述筆記を申し出たのだが、彼の唇が快楽の世界を紡ぐほどに不破を意識してしまい、頭も心も大混乱!! よみがえるのは数年前のきわどい記憶――不破からの濃厚な口づけ、熱い指先…。ずっと友人でいたいから、あの日をなかったことにしたのに…! 単行本未収録作も収録した完全版!

収録作品:「犬と小説家と妄想癖」「猫と数学教師と独占欲」「手の中の瑠璃」(本文挿絵あり)

感想:

豪快であっけらかんとした官能小説家と、やや神経質で人見知りな数学教師のカップルです。内心思い合いながらも、友人関係を壊すことが怖くて踏み出せず、たった一度酒の勢いを借りての出来事も忘れた振りでごまかす2人が、不破の腕の怪我を機に距離を詰めていきます。

中身自体は王道で、安心して読める反面突出したものも特段感じられないのですが、攻が官能小説家設定はやはり萌えますね。作品をなぞってあれこれされるパターンも良いですが、本作の「腕を怪我した官能小説家のために口述筆記をかってでる」おぼこい受が、耳から入ってくる刺激的な言葉に動揺してしまうパターンも大好物。わりと短めの表題作でくっつき、分量的には続編の「猫と数学教師と独占欲」で、友人関係から恋人同士へと関係性を変化させる際の難しさや、官能小説家の枠を超えて人気が出始めた不破に対する鮎川の不安や焦燥が比較的じっくり描かれます。

不破の担当編集者・沖屋の食えないキャラっぷりも良かったので、彼がメインの『捨てていってくれ』も、そのうち読んでみたいです。