ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『いぬのなまえ』菅辺吾郎

逆らわぬよう、躾けられた。黒川財閥に仕える関口家の子供である巴は、黒川の次男・長次郎の「犬」として有名。幼い頃は仲が良かったはずの二人だったが、今や巴は、一方的に長次郎に疎まれ、虐げられる。そんな巴を学友らは遠巻きにしていたが、全く気にせず巴に接してくれる男が現れ……? 

収録作品:「いぬのなまえ」

感想:

飛び抜けて良いとまではいえないけれど、過去の作品からして「安心して読める」印象を持っている作家さん。今回幼馴染身分差もので、設定はやや重め。わたしもまったく詳しくない分野ですが、舞台が1950年代後半(東京タワー竣工後)なのに財閥?等々やや設定に疑問を抱く部分はあったり。名残として身分差があるのはわかるのですが、時代設定の割に描写が古いような。途中まで大正設定だと思って読んでいました。

長次郎は暗いし巴はいじけているし、登場人物眉間にしわ寄せっぱなしだし、ひたすら鬱展開を読み進む感じです。前半はまだぬるいというかコメディリリーフの嶋くんも効いていたのですが、後半は暴力描写含めかなり描写がきついので注意です。雰囲気やテーマ自体は好きなタイプなのに、これまでの作品と比べるとテンポも悪く、題材と比べて重量感にも欠ける、ちょっと惜しい一冊でした。

たまに遠近感や物の大きさの狂いが目立ちますが絵はしっかり描き込まれています(たまに劇画タッチになるけど)。濡れ場はありますがエロというよりはほぼ「無理やりやられている場面」で色気はあまり、です。