ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『傷痕にキス』神楽日夏(イラスト:吾妻巳緋)

 

傷痕にキス (ガッシュ文庫)

傷痕にキス (ガッシュ文庫)

 

彼の声が、表情が、仕草が、身体の奥を熱くする―。斉木昂哉は高校時代に1度だけ関係を持って天堂戒を想い続けている。無理矢理の情交だったけれど、彼が見せた刹那の優しさに焦がれていた。思いがけず再会し、会社員を辞めて戒がVIP客であるダイニングバーのスタッフになった昂哉。昂哉を覚えていない様子の戒は冷たいが、そばで見つめていられたらいいと思っていた。ところがある日、苛立ちをあらわにした戒に再び身体を奪われ―。

収録作品:「傷痕にキス」「傷痕にキス2」(イラスト有)

感想: 

一度だけ関係を持った相手に片思いを続ける主人公は家庭に恵まれず進学を諦め借金返済に勤しんでいた不幸受。いくら片思いの相手に再会できたからといって(そして借金もちょうど返し終わったからといって)、会社を辞めて彼が常連客として通う店に転職するのは健気といえばいいのか無鉄砲というべきか。

一方、光沢のある黒シャツのボタンを胸まで開けシルバーアクセサリーをつけ革パンを履く攻はビジュアル的にアウトだなあと当初思ったものの、読み進めれば何てことはないSのふりしたツンデレオカン攻でした。何で稼いでいるのかさっぱりわからないけど羽振りが良いという謎も後半で一応説明はされます。

全体的にツンデレ世話焼きと、一人でぐるぐる思い悩んで遠慮するタイプにありがちな噛み合わなさですれ違っていた2人が、不幸な当て馬の犠牲の元に和解し愛を育むのを穏やかな心で見守るお話、でしょうか。

文章の面ではほぼ句点ごとの改行とときおり妙にポエミーになるのがやや気になりました。