ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『人魚姫のハイヒール』安西リカ(イラスト:伊東七つ生)

 

人魚姫のハイヒール (ディアプラス文庫)

人魚姫のハイヒール (ディアプラス文庫)

 

 同期のモテ男・加賀谷に片想いしている瀬戸。自分が女だったら彼女になれたのかな…そんな思いから出来心で女装した姿を、当の加賀谷に見られてしまう。クオリティの高い瀬戸の女装を喜んでいる様子の加賀谷に、瀬戸は実は女装趣味があるわけではないと言い出せなくなる。手先の器用な加賀谷にメイクされたり、ハイヒールをプレゼントされたりと”彼女”扱いをされるのが、嬉しいけれど苦しくなってきて……?

収録作品:「人魚姫のハイヒール」「王子様のタキシード」、あとがき、(本文挿絵あり)

感想:

本日も女装ものの感想です。これは良作を超えて大当たり! 女装ものならではの色っぽさが至るところからにじみ出ていて、ここ最近続けざまに女装ものの良作を読んだこともあり新しい扉が開いた感があります……!

決して女装が趣味ではないのに、加賀谷との距離を縮めたい、加賀谷を喜ばせたいという思いから引っ込みがつかなくなっていく瀬戸。ネットで体型を隠せる服装やメイクを学び、ボディメイクのための恥ずかしい下着を身につけ、加賀谷に送られたルブタンを美しく履きこなすため部屋で一人ウォーキングの練習をする健気さ。そして、事情を知らないので仕方ないとはいえ、とにかく無神経な加賀谷。読んでいていらいらする方もいるかもしれませんが、わたしは「無神経 vs. 振り回される」構図が好物なのでたいへん楽しみました。

「人魚姫のハイヒール」では、瀬戸視点で、勘違いがきっかけで始まった歪な関係に一喜一憂する切ない恋愛が描かれます。そして続編の「王子様のタキシード」では、加賀谷視点で、男性としての素顔の瀬戸を愛している反面、かつて女装した瀬戸が抱き合うときに見せた恥じらいや色っぽさが忘れられず葛藤する心情が語られます。「女装した瀬戸」ではなく「自分のために頑張ってくれる瀬戸」「(女装姿から脱がされるときに)恥じらう瀬戸」に対する欲情という、ある意味フェティッシュな感情ではあるのですが、付き合うまでの経緯が経緯だけに、また女装して欲しいとは決して口に出せません。加賀谷の元カノも絡んできたりでちょっとごちゃごちゃした結果、結局は割れ鍋に綴じ蓋な2人だなという落ち着き方をするのですが、この番外編の濡れ場がとにかく色っぽかったです! 以前読んだ『ビューティフル・ガーデン』ではそれなりに激しいものの描写があっさりしている印象だったのですが、本作は全体的にねちっこい。ねちっこい攻好きにはたまりません。

ストーリー良し、キャラクター良し、濡れ場は色っぽい。大満足の一冊でした。

 

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