ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『放課後エッジ』ムノ

『お願い、誰にも言わないで……』

昔から可愛いものが好きで、いつしか女装をするようになった戸張。ある日、女子高生の格好でクラスメイトの乾と鉢合わせてしまう。それからというもの、学校でも話しかけてくるようになる乾。戸張の態度など気にせずに距離をつめてくると思ったら、ついには信じられないことを言い出して――で、デートってなに!? 歪で不安定で、でも君の言葉はなんだか心強い。意地悪な好きが織り成す、秘密の恋を一冊に。

収録作品:「放課後エッジ」、おまけ4コマ(3ページ)、番外編(4ページマンガ)、カバー下

感想:

さて昨日に続いて女装ものです。絵が好みで、表紙のやや目つきの悪い黒髪受に惹かれ購入。女装趣味のある高校生・戸張と、戸張の「女子高生」姿を見つけたことからやたら絡んでくるようになる乾のお話です。

友人も多くごく普通の男子高生の戸張は、もともと男の癖に可愛いもの好きの自分にコンプレックスを持っていたので女装趣味などなおさら誰にも言えません。一方の乾は口が悪く気まぐれでどちらかというと孤立するタイプですが、マイペースであまり人を気にしません。女装姿に興味を持たれ、構われれば構われるほどそこに「脅し」「蔑み」を感じてしまう戸張の卑屈さが小憎たらしくも可愛いですし、口が悪くてマイペースで友達のいない乾の不器用さも微笑ましい。青春っぽい切実さと痛々しさはいたるところに散りばめられつつも、全体としては甘酸っぱく可愛らしいポップな作品だと思います。戸張の姉や乾の元カノもいい味出していました。

ストーリー展開も心情描写もしっかりしていて、絵も好み。とくれば当然大満足の一冊なのですが、もうちょっと色っぽい場面があれば尚嬉しかったです……。キスと、ほんのちょっと触るくらいで、そういう意味でも可愛らしいお話でした。他の既刊コミックスもプラトニック多めらしいので、あまり濡れ場は描かない作家さんなのでしょうね。