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ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『悲しみません、明日までは』栗城偲(イラスト:小嶋ララ子)

 

悲しみません、明日までは

悲しみません、明日までは

 

 夏休み直前、要の住む小さな町にやって来た優吾。無愛想な彼が胸中に抱える行き場のない悲しみや憤りに、誰にも言えない初恋を抱く要は共感を覚える。優吾の傍は居心地が良かった。けれど彼は、要が長いこと片想いする隣家の「兄ちゃん」の再婚相手の連れ子だった。要の想いを知った優吾に詰られ、嬲るように押し倒される。抵抗する要だったが、やがて自暴自棄になり……。

収録作品:「悲しみません、明日までは」「恋をしましょう、今日からは」「悲しみません、明日からも」、あとがき(本文挿絵あり)

感想: 

先日はじめて作品を読んで好印象だった作家さんです。こちらは特に飛び道具的な設定はなく、恋や家族関係に悩む高校生たちの甘酸っぱい思春期青春もの。要の家族と隣家の雰囲気、何もない町を自転車二人乗りで疾走してアイスバー(というかあれ「ガリガリ君」ですよね)食べる高校生とか、ノスタルジーに襲われっぱなしでした。田舎と夏の匂いがして、この時期に読むにはぴったりです。

親の再婚、大好きだった「お兄ちゃん」への失恋、打ち込んできた夢への挫折。家族や恋愛、将来の夢に悩むことなんて誰にでもあることで、振り返ればいい思い出とまではいかなくても大体はなんとか乗り越えていけるもの。しかし繊細な思春期ど真ん中の彼らには人生を揺るがす大きな事態で(親の再婚は思春期関係なく大事件ですが)、一方で物事を自分で切り開けるほど成熟しているわけでもありません。

若い2人が、友情のような、慰め合いのような、苛立ちのような感情で結ばれ、徐々にそれが恋に育っていく過程が丁寧に描かれていますが、丁寧すぎてなかなか恋愛っぽくならないのがもどかしくはありました。大きなイベントに乏しい分全体的にややのっぺりと感じる一方で、そのだらだら感もまた学生時代の夏っぽく感じてしまったり。派手さはありませんが良作だと思います。大学生になった2人を描いた番外編も、内容的には凡庸ながらも成長と人格の確立が感じられて良かったです。

ちなみに作品そのものとは関係のない話ですが、小嶋ララ子さんの描く要がいかにも田舎の子といった風情で、多分設定的に正しいんでしょうけど、正しいんですが……画風もあいまってイガグリ頭の小学生に見えてしまいます。おかげで色っぽい場面を読んでいても、どうにも罪悪感が……。

 

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