ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『新婚神社で抱きしめて』安曇ひかる(表紙イラスト:麻々原絵里依)

 

新婚神社で抱きしめて (幻冬舎ルチル文庫)

新婚神社で抱きしめて (幻冬舎ルチル文庫)

 

友人の身代わりに女装して巫女のバイトをしていたことがバレた直は、宮司の鷹介に「口止め料」として嫁に来るよう命じられる。嫁といっても実は雑用係、立派な宮司の外面に反して生活能力ゼロの鷹介の世話をさせられるが、大好きだった兄が家を出た悲しみで腑抜けになっていた直には気が紛れる日々だった。縁結び神社で始まった同棲生活の行く末は? 

収録作品:「新婚神社で抱きしめて」「新婚神社の夏」、あとがき(本文挿絵なし)

感想:

コミックスでこれといった電子新刊がないので、Kindleに積んであるノベルス中心に読んでいます。安曇さんも4冊目なので、そろそろイマイチな作品に当たってもおかしくはない*1と、覚悟して手に取りました。「女装」「新婚」というワードからそこはかとなく漂うイロモノ臭と地雷臭……でしたが、結果から言えば大当たりでした。

設定もイベントも盛りだくさんです。鷹介は生育環境に訳あり、現在も家族と訳ありな、口は悪いけれど包容力のある宮司。血の繋がらない兄への片思いをこじらせている直は、女装して巫女のバイトする、初対面の男とホテルまで行って逃げ出す等々衝動的な行動多め。それぞれの家族の問題やそれに伴う誤解あり、当て馬やら横恋慕やらもあり、事故あり、下手するとぐちゃぐちゃ収集つかなくなりそうな大盤振る舞いですが、どのエピソードも適度なボリューム、タイミングで繰り出されるのでむしろお話全体のスピード感やポップさを盛り上げていたと思います。

くっつくのが意外と早いなー、でもここまででもイベント盛りだくさんだったなー、と思っていたら、そこからさらにエピソードが畳み掛けてきたのには驚きましたが、忘れかけてた直と兄との話もしっかり回収されて一安心。神社のすぐそばに農家があるので田舎の話かと思って読み進めていたところ、銀座が行動圏内だったりするので、舞台は練馬とか武蔵野とか区外のあたりなのでしょうか。

口の悪い鷹介と小生意気な直の会話は、テンポよくユーモアに富んでいて楽しめました。特に鷹介! 大人の狡さや余裕が目立つキャラクターだからこそ、直に振り回されるときはギャップ萌えもあり、いや、安曇さんの描く年の差年上攻は素敵ですね(『ドクターの恋文』のカップルもわたしはすごく好きでした)。ねちっこい年上攻と翻弄されつつ煽る受というツボなシチュエーションの濡れ場にも大満足。番外編はまさかの「褌プレイ」ですが、これが意外にも萌えます。褌好きでない方(布越し好き、姿見プレイ好きあたりは特に)も必読です。

 

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*1:BLは設定自体で好き嫌いが決まってしまうことも多いし、同じ作家さんを読み続けるとどうしてもマンネリしてくることもあり、作品自体が悪くなくとも読後感がイマイチということは多いかと。