ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『裏を返せば…!』栗城偲(イラスト:梨とりこ)

 

裏を返せば…!

裏を返せば…!

 

 塾の事務員である南雲は、鬼軍曹と渾名される数学講師の本郷が苦手だ。本郷は授業中以外は優しいのだが、南雲にだけはいつもあたりが強いのだ。けれど男に殴られていた本郷を助けたところ、彼に自分はゲイで南雲のことが好きだと、驚くべき告白をされた。おまけにMでつれなくされるのが嬉しかったらしい。てっきりドSだと思っていた彼に「しつけてください」と言われても……!?

収録作品:「裏を返せば…!」、あとがき(本文イラストあり)

感想:

初読の作家さんですが、とても面白かったです。長身イケメン一見厳しそうなのに実はM属性ゲイの本郷に懐かれた、地味童顔ノンケの南雲。恋愛感情はないながらもゲイへの偏見もない南雲は、本郷と(元)彼氏の修羅場を目撃したことをきっかけに、心配だか興味本位だか自分でもよくわからないままぐいぐい本郷の領域に。見た目は童顔でも中身男前な南雲と、冷たくされて喜ぶ本郷の凸凹コンビは見ていて非常に楽しいものの、なかなか恋愛の気配がせずどうなることかと思いましたが、南雲が本郷を意識しはじめるきっかけ(色っぽかった!)も、その後の「Mなのに本気で嫌われたら凹む」本郷も、丁寧かつテンポよく描かれていて良かったです。

タイトルがまた、お上手ですね。本郷のMの定義は、いわゆる単純な「虐げられると嬉しい」「痛めつけられると気持ちいい」とはまたちょっと違う感じで、「相手の望むことを与える」ことがベースにあります。それゆえ、終盤の濡れ場は「おいおいお前そっちかよ」というやや意外な方向性に走ってしまいますが、ねちっこい攻が大好きなわたしとしては、これは嬉しい誤算でした。Mっ気のある攻が「自分が受だったらやられて嬉しいこと」を最大限にサービスすると、ああなっちゃいますよね。SはサービスのSとはよく言ったものです。

文章もそつなく、展開もお上手で、しかも濡れ場の書き方も好みだったので、次は何を読もうか楽しみです。

 

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