ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『てのり彼氏〜花の蜜で愛撫〜』鈴木あみ(イラスト:Ciel)

 

 「小さいのに乳首感じるんだな」ある日、手のひらサイズの体になってしまった花屋の香は、超エリートで美形の幼馴染み・鶯生に拾われる。風呂で洗われているだけなのに、鶯生の大きな掌で小さな乳首に触れられると甘い声が止まらない。恥ずかしくて堪らないのに、更に股間や後ろの穴を舌で激しく舐め上げられ、信じられない程の快感に、何度も達する香。小指も入らない穴を執拗に弄られ強烈な快楽に溺れていって……!! 淫らすぎる、BL版おやゆび姫!!

収録作品:「てのり彼氏」「てのり恋人」(本文挿絵あり)

感想:

BL版おやゆび姫というか、BL版「南くんの恋人」というか、受がちっちゃくなってしまう話です。あらすじからしてストーリーに期待はしていなかったのですが、そして実際にストーリーなどあってないようなものだったのですが、あらすじから期待するほど濡れ場の描写が濃厚というわけでもありませんでした。小さくなってどうこうされるという設定自体は好みなので、期待して読み始めた分ちょっと残念。

受は冒頭から攻に惹かれているのですが、自覚なし、どころかむしろ一方的にライバル視している関係。奇妙な出来事をきっかけに体が小さくなったところを攻に拾われ、面倒をみてもらっているうちに恋心を自覚し、想いが通じて後はラブラブ、という……。これだけ凸凹もひねりもない筋書きなら、せめて濡れ場を、もう少し濡れ場を!

回数として少ないわけではないのです。ただ、結局「小さくなった相手」にできることって限られているので(挿入できないしね!)、工夫しないとそんなにネタって続かないんでしょうね。結局「てのり彼氏」では割とあっさり受の体の大きさが戻ってしまうし、「てのり恋人」では割とあっさり(?)攻の体も小さくなってしまったり。そうなると、そもそものエロ描写自体があまりねちっこいタイプではないので、特に目新しさも萌えもなく……。飛び道具系の設定って使い方が難しいんですね。

ただ、小さくなった香がティッシュ箱のベッドに喜んだり、猫の背中に乗ったり、お風呂で泳いだり、そのあたりのファンタジー設定を活かしたほのぼのエピソードは非常に可愛らしかったです。漫画と小説というメディアの違いはありますが、夏水りつさんの『山田くんと田中課長』みたいなほのぼの系の方が、こういう設定には合うのかもしれませんね*1

*1:わたなべあじあさんの『春恋さくら』収録の短編にも、手のひらサイズの妖精が和菓子屋の息子にあれこれされてしまうもの(「薫風端午」)があって、あれは可愛くてエロくてすごく好きです。