ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『ビューティフル・ガーデン』安西リカ(イラスト:夏乃あゆみ)

 

ビューティフル・ガーデン (ディアプラス文庫)

ビューティフル・ガーデン (ディアプラス文庫)

 

期限つきの関係だったのに、本気で好きになってごめんね。
新進プロダクトデザイナーの倫は、新たに手がけることになったキッチン用品シリーズ『ザ・ガーデン』の仕事で、メーカー担当者の伊東と知り合う。 ゲイを公表している倫は直感で彼を同類だと確信するが、伊東は過剰にそれを否定した。嫌悪感もあらわな彼の反応に苛立ち、倫が嫌がらせ半分からかい半分で誘惑してみたところ、伊東に獣のように激しく求められ……? 心ふるえる年下攻エモーショナル・ラブ。

収録作品:「ビューティフル・ガーデン」「ビューティフル・ライフ」、あとがき

感想:

以前読んだ作品は可もなく不可もない印象でしたが、この作品はとても良かったです。

必死でゲイであることを隠してきた伊東と、性志向をオープンにしている倫。一見倫の方が割り切っているように見えて、倫の「他人に対して必要以上に関係をごまかしてほしくない」というのは傷つきやすさや過度な感受性の裏返し。実際に家族や故郷の人々との間には軋轢を残していて、いざ伊東に対する気持ちが強くなってしまえば、伊東以上に関係をオープンにすることに恐怖感と抵抗を抱くようになります。一方で実家の家族との信頼関係にも恵まれている伊東はいったん腹を括ってしまえば倫より遥かにあっさりと自分の性志向と向き合ってしまいます。

気持ちの強さという意味ではお互い同じように思いあっているのでしょうけれど、「同性愛であること」での振る舞い方が、本気で大切な相手ができることで真逆の方向に振れてしまう倫と伊東。シリーズ2作品を通じて、2人の気持ちの振れや、すれ違いが丁寧に描かれるのが大好きなパターン。さらに、言語表現の苦手な倫が自分の感情の変化をうまく言語化することができないもどかしさや、最終的な話の納め方含め、簡単でない関係を簡単に解決させないストーリーにも誠実な印象を持ちました。

濡れ場は割と回数もあって内容も激し目ではあるのですが、個人的にはそんなにぐっと来ず。分量の割にあっさりしているように感じたのは、前戯やら言葉責めやらのねちっこさがあまりなかったからでしょうか。でも恋愛小説としてはとても良かったです。

 

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