ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『ドクターの恋文』安曇ひかる(表紙イラスト:山本小鉄子)

 

ドクターの恋文 (幻冬舎ルチル文庫)

ドクターの恋文 (幻冬舎ルチル文庫)

 

祖父から受け継いだ下町の文具店をひとりで切り盛りする木嶋智秋の本職は、万年筆を修理するペンドクター。四年近く付き合った恋人から結婚を理由に突然捨てられ、その傷が癒えぬまま見知らぬ男と一夜を共にするが、相手はどうも智秋を知っているらしい。それもそのはず、その男・檜野冬都は、中学生だった智秋の包茎手術を担当した医師で――!?

収録作品:「ドクターの恋文」、あとがき(本文挿絵なし)

感想: 

街の診療所を切り盛りするメディカルドクターと、祖父の文房具店を継いだペンドクター(万年筆修理士)。タイトルで言及されているのはどちらのドクターのどんな恋文なのか、終盤にすっきり話がつながるのが気持ちよい良作。作中のキーとなっている万年筆についてはうんちくもしっかりしていて、読んでいてちょっといい万年筆を持ってみたくなりました。

智秋の檜野との因縁は、冒頭でまず「一週間前に酔った勢いで抱いてもらった気まずい相手」であることが明かされ、その後少しお話が進んだところで「かつて中学生の智秋が包茎手術を受けた際の担当医」だったことも判明。気まずくて檜野を避けたい智秋と、しつこくちょっかいをかけてくる檜野の攻防がしばらく続きますが、檜野が購入した万年筆を通じて、そして近所の老人の体調不良など幾つかの出来事を通じて智秋の檜野への感情も徐々に和らいでいきます。ちょっと意地悪なところはあるけど面倒見の良い年上医師と、文房具店を継いで日が浅く、まだまだ未熟なところのある智秋のやり取りが微笑ましいです。

ただ、話全体の流れの中で大きな役割を果たす智秋の元彼、ストーリー上仕方ないんですけど、彼がかなり定番な人物造形かつ智秋との関係性も定型的。まあ王道は王道で好きなので良いですが、さすがに千秋も4年付き合っているんだからちょっとは裏の顔に気付かないものかとか、外面よくて世渡りうまそうな割に元彼簡単に追い詰められすぎとか、ちょっともやもやしてしまいました。

濡れ場は回数は少な目ですが、好きなタイプのねちっこい描写で大満足でした。ちょこちょこお医者さんプレイや、過去(包茎手術)を持ち出しての言葉責めがあるのも高ポイント。ここまで2冊しか読んでいませんが、どうも安曇さんの書く濡れ場はツボみたいです。

 

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