ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『グッドバイライラック』ゆき林檎

高校教師の笠井にとって、加藤怜二という生徒は手のかかる、だけど可愛い生徒だった。加藤から好意を告げられても、教師と生徒のラインを越えることもなく春の訪れとともに、加藤の卒業を見送った。あれから数年。加藤は教師となって、笠井の勤める高校に赴任してきて── 

収録作品:「グッドバイライラック」「(描き下ろし)先生との日々」

感想: 

ゆき林檎さんの久しぶりの新刊だというだけで嬉しいです。高校教師・笠井と、手のかかる生徒から数年間のブランクを経て同僚になった加藤。ノンケの笠井をひたすら想い、同僚になってからはやや押し付けがましいほどの態度で距離を詰めてくる加藤。そして恋愛感情は持てないものの「可愛い教え子」として、どうしても加藤を突き放せない笠井。2人の距離は、縮まりそうでなかなか簡単にはいきません。

笠井のジレンマ自体は理解できるものの、寄せられる想いを知った上での過剰ともいえる加藤への庇護は、ただ煮え切らないだけの狡い大人なんじゃないかと思ってしまったり。一方の加藤は、DV男と同棲するし言動行動はメンタルの危うさ丸出しだし。読んでいてもやもやする部分は多々あります。しかし特に笠井に対しては「突き放すか受け入れるかさっさとはっきりしろよ!」とひたすら悶々とさせられたからこそ、終盤の展開がぐっとくるのかもしれません。

出会ってすぐに燃え上がるような恋愛ばかりが愛ではなく、なんとなく目が離せなくて、優しくしたくて守ってあげたくて、気づけば手放したくなくなる、こういう愛の形もあるんですかね。やや共依存にも見えるカップルですが、最終的に幸せそうだからそれでいいです。濡れ場も回数描写ともに控えめではありますが、体や表情やモノローグがものすごく色っぽくて萌えました。銭湯の場面、すごくエロかったです……!