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ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『いちばん遠い星』秋平しろ

将来自分の店を持つため喫茶店で働く海老原。大学時代の後輩でエリートサラリーマンの貝森とは友人関係にある。かつて告白され断ったけれど、今でも貝森は好きだと言ってくれる。本当は海老原も貝森が好きだ。でも、告白する勇気はない。過去の恋愛のせいで体の関係は持てないし、
今さら恋愛対象が同性だとも言えなくて……? 

収録作品:「いちばん遠い星」「Merry Christmas Darling」、あとがき、おまけ4コマ(2ページ4本)、Renta!限定オマケ(1ページマンガ)

感想:

これは大当たり。秋平さんの『飴とキス』は読んだことあって、割と好感持ったものの受のキャラ*1と、絵がやや不安定なのが気になった覚えがあります。で、久々に手に取ったのが本作ですが、独特の雰囲気は残しつつ絵がすごく上手くなっていました*2! 相変わらずの心情描写の細やかさはもちろん、モノローグのセンスも良いです。

振られても諦めず、かといって押し付けがましいことはできない(元ノーマルの)優しいヘタレな貝森と、告白されたとき「同性は無理」と口をついた嘘を長い間修正できずにいる海老原。海老原が貝森への気持ちを抑えてしまう理由は過去の嘘だけではなく、セックスに関するトラウマで、「付き合ってもどうせ期待に応えられない」という恐怖と諦めがベースになっています。

長い片思いやすれ違い系のお話の中でも設定がちょっとひねってあって新鮮です。ヘタレで優しくて抑制的な年下ワンコ攻と、クールでちょっとツンデレぎみな拗らせ受。あと一歩のところでなかなか恋愛に至らない2人の距離感はもどかしいけど心地よくて、なんかもうこのままでもいい……とうっかり思ってしまうほど。もちろん、恋愛関係の2人も負けず劣らず素敵なんですけどね。長い想いが叶った喜びとちょっとした悔しさに泣いてしまう貝森には、つられて胸がぎゅっとしてしまいました。意外と濡れ場もしっかりしていて、修正も適度な感じだったのもお得気分を上乗せしてくれます。

店長の娘のさくらちゃん(緊張すると何を聞かれても「えだまめ」としか言えなくなる)の可愛さをはじめ脇役も皆さんポイント高いです。先生もいい味出していて、恋愛マンガ、小説だと話のスパイスに憎まれ役の恋敵が出てきがちだけど、こういう善人ばかりの優しい話と、その優しさに包まれた寂しさや切なさというのも良いものです。大学時代の仲間たちが集ったときの賑やかな空気と会話がいいんですよね。くだらない軽口とか「あるある」という感じで。このあたり『飴とキス』のアパレル販売員の飲み会だったり、『僕らの群青』の教室の風景や高校生の会話など、秋平さんの描く若者たちの場面は実にリアルで素敵で(そんな時代過ぎ去ってしまった者として)ノスタルジーに悶えてしまいます。

これだけ話書けてセリフや展開も上手くて絵もお上手になっていて、秋平さんも目が離せない作家さんリスト入り決定です。幸せ。

 

↓↓秋平しろさんの他の作品の感想も書いています↓↓

*1:自分の外見に激しくコンプレックス持っている設定だったのですが、正直見た感じごく普通の子なのであまり心情に寄り添えなかったのです。

*2:たまに膝下がぐにゃぐにゃしてるのだけはまだちょっと気になりますが。

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