ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『この美しき世界のまにまに』花房マミ(イラスト:水無瀬雅良)

 

この美しき世界のまにまに【イラスト付】 (SHY文庫)

この美しき世界のまにまに【イラスト付】 (SHY文庫)

 

中性的で整った容姿を持ちながら自他ともに認めるクズ系大学生、吉井清良。その日も付き合っていた女に「クズ!!」と捨て台詞をもらい振られたばかりだ。クズ呼ばわりにも振られることにも慣れている。けれど、隣に引っ越してきた真面目で誠実そうな男、高村泰幸に別れ話を聞かれた挙げ句、「俺はあなたみたいないい加減な人は嫌いです」とまで言われてしまった。人当たりのいい清良に初対面でそんなことを言う男は初めてだ。最悪な出逢いを果たした正反対なふたりだけど? 

収録作品:「この美しき世界のまにまに」(本文挿絵あり)

感想:

初読の作家さん。タイトルとあらすじに興味を惹かれて読み始めたのですが、ページをめくるにつれて「あれあれ?」と。最悪な出会い、正反対な2人、いずれも好物な設定なのですが、そのあたりはあまり深く書き込まれておらず、登場人物の設定に加え文体がかなり軽めなこともあいまって、話全体がふわふわとしています。

真面目で面倒見が良い料理上手の泰幸はまあ一貫性のあるキャラクターなのですが、清良については「クズ」と呼ばれる割にはただ執着が弱く流されるだけの人物で、なぜこんなに淡白な男が冒頭では遊び人設定になっているのだろう!? と違和感。そして泰幸と一緒に過ごすようになってからはやたら真面目でいい子。

全体的に脇キャラクターが過剰な点も気になりました。清良を狙っている結花菜ちゃんの、ちょっと胸元に目を向けられただけでの自意識過剰っぷりはひたすら怖いし、元カノの恨み醸成&復讐方法も唐突。そして泰幸を慕う美少年の従兄弟・絢がまた強烈なキャラクターで、これらの脇キャラクターが散発的に謎イベントを繰り出してきて、かといって別にドタバタコメディを狙っているようでもなく……、作品としてとっ散らかった印象が拭えませんでした。

こういうお話はこういうお話で良いのかもしれませんが、わたしは! わたしはクズ受がメロメロにされてこてんぱんにされる話を期待していたんです(心の叫び)! という意味でちょっと消化不良な一冊でした。勝手な期待したわたしが悪いんですけどね。