ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『ラストフライデイ』絵津鼓

「彼女じゃなくて彼氏じゃダメ?」

海が家の仕事の手伝い先で出会ったのは、ラウンジのボーイの欣也だ。最初はただのチャラいボーイに見えた欣也だったけど、ドジな拓海を何度も助けてくれる。だんだん仲良くなっていった拓海と欣也は、なんと二人でデートの練習をすることに!果たして拓海に彼女はできるのか……!?

収録作品:「ラストフライデイ」「(描き下ろし)欣也、加速」「(描き下ろし)ベビー」、あとがき、「(リレー漫画)ええツッコミやん!」、カバー下

感想:

これは……可愛い!!! もだえる!!!

以前別作品を試し読みして「あっさりしすぎてそう」と購入を見送った作家さんです。しかしweb雑誌「ハニーミルク」(創刊フェアで安売りされていたので読んでみました)掲載の「JOY」が思っていたよりコミカルな作風だったので興味を持ち、過去作品も買ってみました。結果、今まで読まずにきたことを大後悔。

絵がきれい、テンポが良い、程よくゆるくて程よく切ない、登場人物がみんな可愛い。本作品についてはエロさはないものの、エロさ以外はほぼ何もかもが揃っているといっていいんじゃないでしょうか。受が年齢の割に行動言動ともに幼いというのは好き嫌い分かれる要素かもしれませんが、絵柄や作風とマッチしているので特に違和感はありませんでした。

わたし好みの、ポップで軽い流れの中に切実さを紛れ込ませた、メリハリのきいた作品です。お勉強ばかりの内向的ないい子ちゃんでやってきて、唯一心許してきた兄貴分の結婚に動揺がおさまらない拓海。いびつな家庭環境とそれゆえの歪んだ恋愛感情に苦しんだ過去を持つ欣也。拓海は傍目には天然ボケで能天気な悩みのなさそうなお子様(成人だけど)だし、欣也はなんでもそつなくこなし交友関係も華やかな大人びた少年だし。

特に若いうちは、隣の芝生は青くて、自分ばかりが辛くて歪んで、他の人間は皆健やかに見えてしまう。そんな風にお互いをまばゆく羨んで、けれど徐々に距離を詰めて、ときに生生しい感情をぶつけあったりしながら、「人は誰しも辛さを抱えている」ということを2人は学んでいくのですね。実に若々しく初々しいカップルのはじまりの物語は、 ひたすら青臭く眩しくて、ぎゅっと胸に迫りました。

 

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