ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『好き嫌いはイケません』鳩村衣杏(イラスト:小山田あみ)

 

 イタリアン期待の星と言われながら、シェフになる予定だったレストランが潰れ、出版社の社員食堂で職を得た番匠。ただでさえジクジク痛むプライドを、初対面の編集・志生野に抉られ険悪な雰囲気になってしまう。しかも番匠の料理に決して手を出さない志生野の印象は最悪。それなのに寮のラウンジに行けば先客として志生野が…、ストレス解消にとジョギングすれば後ろから志生野が…。結果、なぜだか毎朝二人でウォーキングする羽目になって──!?

収録作品:「好き嫌いはイケません」「特別版」、あとがき(本文イラストあり)

感想:

出版社の社員食堂で働くイタリアンシェフと、編集者。珍しい組み合わせだなと思いつつ読み始めましたところ、実に良かったです。ケンカップルというほどケンカはしていない気もしますが、最悪な出会いから距離を詰めていく系のお話が好きな方にはおすすめ。何よりラブストーリー一辺倒ではなく、お仕事部分もしっかりしているので読み応えがありました。

メインの2人はいずれも長身イケメンで、優秀なイタリアンシェフと有能な編集者。一見隙がなさそうなのですが、番匠は就職予定だったレストランが潰れたせいで不本意な就職をする羽目になり、負けず嫌いが空回りしてランニングを始めれば酸欠でへたってしまいます。一方の志生野も、クールで優秀可愛げがない……かと思いきや、「野菜が苦手」という弱点を抱えたなにやら不器用な人間な上に変態。冒頭からは想像もつかない隙だらけなカップルなので、途中で「(今思っているのと)受攻が逆でも驚かない」と思ったくらいです。いえ、最終的には想定どおりでしたが。

あえていうなら、志生野の思いを知った後に番匠がほだされるまでの流れが少し急だったことと、濡れ場の回数が少なかった(でも描写は変態っぽくて良かったです)ことがほんのちょっぴりマイナスポイントですが、全体的には大満足の一冊です。小山田あみさんのイラストも美麗。