ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『狼は魔法を』懐十歩

周囲に「イケメン」と羨まれてきた永瀬。だが、過去に好きになった男に拒絶され、行きずりの男達との行為で孤独を紛らす日々を送っていた。永瀬が望むものはただひとつ──愛する誰かから愛されること。そんな永瀬が出会ったのは大学の先輩・樋口。自分をゲイと知っても動じない、樋口の自然体な優しさに接し、いつしか惹かれていく永瀬だったが──。表題作ほか、強面オトコの繊細な恋を描いた花屋シリーズも収録! 

収録作品:「枯れた花に恋の水」「単行本『狼は魔法を』カバー下おまけ漫画」「狼に魔法を」「狼は魔法を」「狼と魔法を」「単行本『狼は魔法を』あとがき」「傍の遠吠え」「grooming time」、あとがき

感想:

紙書籍版に未収録だった続編や描き下ろしを加えての完全版とのこと。紙書籍時のカバー下やあとがきも収録されており、ボリュームたっぷりです。懐十歩さんは先日初めて読んだ『ショートタイプコンプレックス』がいろいろおかしいコメディで良かったのでこちらも買ってみました。こちらはじっくりじんわりくるラブストーリーで、作品の雰囲気は『ショートタイプ〜』とはまったく異なりますが、なかなか良かったです。

表題作は、とにかく樋口先輩がいい男すぎて! ぼんやりしているようで芯がしっかりしていて、決めるところは決めるんだけど、過度の気負いがない。ちょっと鈍感っぽい部分はありますが、一緒にいて楽なタイプですよこれは。で、頑なな永瀬が徐々にほどけていくのも微笑ましいです。終盤先輩は先輩で嫉妬や焦りを抱いたりもするのですが、そういう人間くさい感情の出し方も、厭らしくないんですよね。朴訥とした風貌含めて本当素敵でした。

併録の「枯れた花に恋を水」は、仕事に似つかわしくないヤクザっぽい風貌を持つ花屋と、彼に惚れた男の話。こちらもオーソドックスではありますが、きれいにまとまった作品でした。ただ、わたしは強面受属性持ってないので、イマイチ萌えきれず残念でした。

全体として濡れ場は少なめ、軽め。感情描写やお話でじっくり読ませる系の一冊です。

 

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