ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『パラダイムシフト』ぴい

仕事オタク36才、はじめての恋。

――大手製薬会社の主任研究員・日比谷は科学一筋の36才。実験中に蜂に刺されてアナフィラキシーショックを起こしたことから、強い交配への渇望が芽生え日常生活を送れなくなってしまう。そんな彼を献身的に支える部下の山木。次第に上司と部下の関係を飛び越えて惹かれ合うが、山木には日比谷に伝えられない事実があった──。

世話焼きな部下×童貞科学者のドラマティック・サイエンス・ラブ!!

収録作品:「パラダイムシフト」「(番外)13 Years Ago」「(番外)10 Years Later」、オメガバーストは、あとがき

感想:

「オメガバース」設定の作品です。欧米の二次創作から生まれた設定で、日本では最近BLに移植されてちょこちょこ作品が出ているようです。男女の性が形骸化し誰もが妊娠できること、「α(アルファ)」「β(ベータ)」「Ω(オメガ)」という3種類のタイプが実質的にカーストに近いものを形成していることが特徴でしょうか。カーストというか支配・被支配の構造や、男性の妊娠ものがお好きな方にはツボかもしれませんが、個人的にはBLの妊娠ものには抵抗があり、この手の設定にはほとんど手を出さずにきました。

というわけで、オメガバース設定だとはまったく知らず買って、ちょっとびっくりしましたが、まあものは経験なので読んでみることにしました。なお、ぴいさんの『過剰妄想少年』が大好きなので、作者買いです。

少なくとも本作については、オメガバース的な設定はエッセンス程度、軽いSF設定のBL作品の範疇で、読みやすかったです。β(多数層)だったはずが、アナフィラキシーショックをきっかけにΩ(発情期と性フェロモンを持つマイノリティ)に変わってしまったことに動揺する日比谷と、彼を献身的に支える部下・山木。突然の発情期にコントロールのきかない日比谷を家に連れ帰った山木の世話焼きっぷりはオカン攻好きにはたまらず、攻のエプロン姿も実に良いものだと思いました。そして決めるところはしっかり決める、年上&男らしい部分のある受! サスペンス的要素もありつつ基本は愛あるかわいいお話なので、わたし同様「なんかオメガバースって……」と思っている方でも違和感ないかと思います。濡れ場も回数は少ない+白抜きですが、色っぽかったです。そして10年後のちょっとおっさんになった2人も幸せそうで素敵でした。

オメガバースの設定自体は複雑ではありますが、随所にエッセンスの解説ページが挿入されているため、初読者でもそう戸惑うことはありませんでした。ただ正直、なんで商業マンガ読むのに作品内の説明で足りず、まどろっこしい設定勉強しなければいけないのかという気もします(などとぶつくさ言いつつ、本作品が面白かったので、他にもオメガバースで良さそうな作品があれば読んでみようかなという気になりました)。

今回、ふゅーじょんぷろだくとの「オメガバースプロジェクト」作品をまとめて配信開始するに当たって、Renta!では、特集ページを作って作品紹介やオメガバースとはなんぞやという説明もしています。ただ、新着ページから購入すると、レーベル名によっぽど注視しない限り、オメガバースものとは認識しづらいのには要注意です。

 

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