『恋廻り』川琴ゆい華(イラスト:yoco)
大学時代に失った恋を未だ引きずっている由弦に、夢の中に現れた大学の後輩・絢人が、過去に戻ってもう一度やり直せと言ってくる。夢かと思いきや、目覚めた由弦は大学生に戻っていた。そう、2年後輩の慧太と初めて出会ったあの日に――。恋をしなければ辛い想いはなくなるのだと由弦は慧太を突き放すが、気づけばもう一度、彼と恋に落ちていた。やがて来る終わりに怯えながらも、由弦は慧太との関係に溺れ…。
収録作品:「恋廻り」「どうしようもない恋」「Don't disturb」「Sweet Bathroom」 (本文挿絵あり)
感想:
タイムリープもの+戻った過去では触れている相手の心がわかる、というSF的な設定ですが、突飛な設定の割に地に足ついたじんわりラブストーリーで、たいへん良かったです。どうせ離れていかれるのだから最初から近づかなければいい、と思っても結局気持ちは止められず、お終いがくるのを覚悟しながら溺れていく恋愛であるからこその刹那的な色気があるお話です。朴訥としているけれど強引な慧太と、抑制と激しさがせめぎ合う由弦のキャラクターも良く、川琴さんの作品では久々に大当たりです。
ネタバレになってしまうので詳細は書きませんが、最後まで読んでしまえば、タイムリープ設定の甘さ(というか説明不足?)が気になってくる部分もあります。でもまあガチのSFではないので、そこは深く考えないということで……。yocoさんのイラストも儚い雰囲気がストーリーやキャラクターにぴったりでした。電子書籍のBL小説だと、権利の関係なのか本文挿絵が収録されていないケースも多く、個人的に本文イラストの有無にはこだわらないのですが(むしろ挿絵で興ざめする場合もありますし)、こういうぴったりはまるケースを見ると、やっぱり挿絵いいなあと思えますね。
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