ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『言ノ葉ノ花』砂原糖子(イラスト:三池ろむこ)

 

言ノ葉ノ花 (ディアプラス文庫)

言ノ葉ノ花 (ディアプラス文庫)

 

 三年前から突然人の心の声が聞こえ始め、以来人間不信気味の余村。ある日彼は、自分に好意を持っているらしい同僚の長谷部の心の声を聞いてしまう。罪悪感を覚えつつも、言葉で、“声”で、一途に注がれる愛情が心地よく、余村も長谷部を好ましく思うようになる。そしてついに長谷部の告白を受け入れるが、余村が心の声を聞けると知った長谷部の反応は意外なものだった……。

収録作品:「言ノ葉ノ花」「言ノ葉の星」、あとがき(本文挿絵あり)

感想:

これは良作。ファンタジーっぽい設定なので合うかわからず避けていた作品ですが、これまで読まずにきたことを後悔。がっつりしっかりラブストーリー読んだ! という満足感でいっぱいです。

「人の考えていることが聞こえる」ようになってしまったがために人間不信に陥っていた余村。愛想良く話しかけてくる相手が心の中で毒を吐いている、なんて当たり前のことで、でもそれが筒抜けで聞こえてきたら傷ついてしまうのだって当たり前。けれど人の心がもし聞こえるのだとすれば、届いてくるのはネガティヴな声ばかりとは限らないわけで、余村はほとんど接点のなかった同僚の長谷部が自分を想っていることを知り、その声に惹かれるように恋愛感情を抱くようになります。

とにかく展開も心情も細やかで、「心の声が聞こえる」という一点を除いてはごくごく普通の人の普通の生活に寄り添っているのが良いです。ファンタジックな話というよりは、人と人とのコミュニケーションについての葛藤を丁寧に描いたお話。そして、邪目線で付け加えるならば、攻の心の声が受にだだ漏れになってしまう状況での濡れ場というのが実に色っぽくて萌えました。

表題作だけでももちろん良い作品なのですが、続編で併録の「言ノ葉ノ星」あってこそ、ベタ褒めしたくなるほどの満足感。人の心ってわかってもわからなくても不安になっちゃうものなんだな、と当たり前のことを突き付けられ、それでもわかりあいたい人間の健気な試みに心打たれ。

あまりに本作の完成度が高かったので、シリーズ他作品をあえて読むかどうか躊躇してしまいます。同じ設定でこれよりいいお話って書けるんでしょうか。

 

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