ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『ジーン・クラッシャー』児島かつら

幼い頃にふたりでした「ないしょのあそび」。そのせいで、従弟である佑真の性癖を歪めてしまったとずっと思っていた靖大はある日を境に佑真を避けるようになってしまった。しかし、大学受験で靖大の住む部屋に転がり込んできた佑真は、自分の性癖はそれが原因ではないと言い張り、それどころか顔を合わせる度に身体を求めてくる。流されてはいけないと仕事に逃げる毎日だが、衝動的に迫られ、子供だと思っていた佑真のオトコな発言に思わずひっぱたいてしまう。それでも懲りずに向かってくる佑真に、靖大は――……? 

収録作品:「ジーン・クラッシャー」「(描き下ろし)それからのふたりぐらし」、あとがき

感想:

はじめて読む作家さん。雰囲気のある綺麗系の絵柄ですが、線の粗さは気になります。この手の絵柄は粗さが味にならないので、もう少し線が繊細になると良いように思います。

中学生の頃、可愛さあまって5歳の従兄弟・佑真に「ないしょのあそび」(要するに性器へのいたずら)をしてしまった靖大。高校生になった佑真に愛情と欲望をぶつけられるようになってからも、本来異性愛者である佑真の性癖を歪めてしまったという気持ちと、抱き続ける恋心の間で揺れ続けます。

一言で言えば直情型年下攻が、拗らせ受に拒まれても拒まれてもアタックする話で、ときおり見せる佑真の子どもっぽいしたたかさ+見え隠れするSっぽさには萌えました。一方で、うじうじ悩んで拗らせていた靖大が、過去にきっちりカタをつけるわけでもなく、半ば強い押しに流される形で過去に折り合いをつけてしまうのは説得力に欠けるというか納得いかないというか。靖大の行為自体重いものだし、後悔と罪悪感はしかるべきものであるからこそ、もう少し正面切ってかたをつける必要があったような気がします。5歳の子どもにいたずらするという重い素材を扱うには多少の物足りなさを感じました。

とはいえ、背徳的な関係と強引な年下攻に萌えてしまうのも事実で全体としては楽しめる一冊。濡れ場も割と多めかつ露骨。絵の粗さゆえに色気が割引なのはちょっと残念でしたが、修正がきつすぎないのも良かったです。