ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『いじわるしないで抱きしめて』木下ネリ

バイで遊び人の出版社営業・祐一郎と無愛想なゲイの“みっちゃん”こと光博は、高校からの腐れ縁。「恋人」にも不自由せず、気ままにみっちゃんと呑むお気楽な日々の祐一郎だったが、アラサーにして最近なんだかちょっぴり寂しい…?降って湧いたお見合い話に「結婚しようかな」とぼやいたら、「そんな誰でもいいようなら俺でいいじゃねーかよ!」とみっちゃんからまさかの告白!えっ、そうなの!?だけど俺たち、どっちもタチだよ!!!? 攻×攻、純情腐れ縁ラブ! 

収録作品:「臆病なハツコイ」「いじわるしないで抱きしめて」「(描き下ろし)いじわるしないで抱きしめて」「君に溺れる」「(描き下ろし)君に溺れる」、あとがき

感想:

初めて読む作家さん。これがデビューコミックスのようですが、絵が洗練されていて、作品としてもきれいにまとまっていました。短編集ですが「臆病なハツコイ」と「いじわるしないで抱きしめて」は登場人物に関連があります。

「臆病なハツコイ」は、恋愛に免疫のない地味書店員が、はじめてできた年下の恋人と体の関係を持って幻滅されることに怯え、すれ違ってしまう、ありきたりだけど可愛いお話。「いじわるしないで抱きしめて」は高校時代からの友人(双方ゲイでタチ)が三十路になって恋愛関係に至るのですが、タチ同士の上下争いものにありがちな「最終的に、自分の好みと上下が違った」パターンだったのでちょっと寂しかったです。いや、こっちでも悪くないんです、悪くないんですが、やっぱり個人的には逆で見てみたかったな……。「君に溺れる」はリーマン年下攻で、こちらはカップリング的にも王道ですが、後半で池端の意外な嫉妬深さと変態性が明らかになったのにはテンション上がりました。

お話、絵柄いずれもあまり個性的な印象はありませんが、安心して読めるクオリティの一冊でした。エロはそれなりにありますが局部の描写は避けられている(か、真っ白に抜かれているか)感じです。

多分カバー下だと思うのですが、最後に1ページのエッセイ漫画と、1ページキャラクター設定表が収録されています。エッセイ漫画には「下書きはすべて裸、ペン入れで服を着せる」主義の作家さんが下書きを送ったところ「どのシーンも全裸の変態漫画になってますけど」と編集さんがドン引きしたエピソードが描かれており、しこたま笑いました。下書き状態で全編見てみたいです。