ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『1/365の恋人』たつもとみお

「俺より好きな相手ができるまで、年に一回誕生日にデートしてやるよ」高校の卒業式の日、思い余って告白した隆史に、颯はそう言ってくれた。それから10年。律儀にデートの約束を守る颯に思いは募るばかりで……。 

収録作品:「1/365の恋人」「涙」、あとがき

感想:

振られても10年間諦めきれなかった側と、振っておきながら「年に一度のデート」を持ちかけた側。10年引っ張って、いざ離れられそうになると「お前は俺を好きでいればいいんだよ」というのも自分勝手な話だとは思うのですが、同性の親友への恋心を認めるにはそのくらいのショックが必要というのもわからなくもないような。そのあたりもう少し丁寧に描かれていれば、もっとスムーズに読めたのかな。宙ぶらりんの10年をはしょって関係が動き始めるところから描いているのでどうしても「急展開でトントン拍子うまくいく話=今までの10年ってなんだったんだろう」と。

長い友人同士から恋人同士になる過程での変化する距離感への戸惑いはしっかり描かれているので、タイトル&あらすじで重心を置いている部分(10年という期間)と、本編で重心を置いている部分(関係の変化)をもう少し一致させていたら印象も変わったかも。

きれいだけどちょっと表情に乏しい絵柄に感じます。濡れ場はしっかりめでページ数もちゃんと割かれていますが、やはり絵の硬さが少々気になります。全体的に悪くないけど、なんだか惜しいな〜という一冊でした。