ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『あふれて、こぼれて、恋しくて。』ナナイタカ

花巻裕太の初恋の相手は、幼馴染のお茶屋の跡継ぎ息子・福元千鶴。「千鶴の淹れるお茶をずっと飲みたい…」という淡い夢を抱いていたが、諦めて上京し就職。しかし、転勤の辞令が下り、地元に戻ることになって!? 

収録作品:「あふれて、こぼれて、恋しくて。」「ないしょのはなし」、あとがき

感想:

絵柄もお話もほわんと可愛い、地に足ついた良い漫画でした。サッカー少年がお茶屋の息子に恋をして数十年。幼馴染の再会ものです。

上京して就職した裕太の朝のお茶が、やかんでなく小鍋で湯を沸かし、ティーバッグを使っているというのが若い男の子の生活感出ています。千鶴と離れている間の諦めたはずの恋心の代償として、2人の関係のちょっとした小道具として「お茶」がお話全体でうまく使われていました。

受は一見ちょっと可愛らしすぎるのですが、おっとり優しい性格ゆえなので女っぽさとは違いそんなに違和感はないですし、話が進むにつれてだんだん「これ、ヘタレ攻が男らしい受の手のひらで転がされてるのでは」という感じになってきます。ギャップ萌え(?)。そして、攻がスーツで千鶴の仕事着が和装なのも新鮮でした。

家族同然の幼馴染で、距離が近すぎるからこそ相手の気持ちが見極められず、関係を壊す怖さが先に立つ難しさ。繊細な関係性がしっかり描けていて、家族や同僚といった脇役も嫌味なくうまく話に絡んでくるのも、とても良かったです。前作の『鈴付きネコはにゃおと鳴く?』はそんなにぴんとこなかったのですが、これは好きだなあ。