ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『まよなかにあまいかおり』三角社ぴえ

野島家は父、兄弟4人、妹1人の6人家族だが全員他人である。次男・信蔵は三男・秋生と子供の頃からどんな時でも一緒にくっついて寝るのが当たり前。大人になってもそれは変わらなかったはず…が、ある日一緒に寝ていたら秋生がキスをしてきて…!? 「あれはいったい何だったんだ」と秋生の変化に信蔵は戸惑い――。他、父×母親兼長男のお話もあり! 四男・緑のお話がシトロンコミックス「どうにかした日」に収録の野島家シリーズ、電子描き下ろしのおまけまんがも収録!! 

 収録作品:「まよなかにあまいかおり」「彼の左のつばさ」「まよなかにあまいわな」、+電子限定描き下ろし漫画

感想:

『どうにかした日』とアンソロジーで短編数本を読んだことがあり、漫画としては面白いのだけれども、絵柄のぎこちなさもあって他作品に手を出すには至らなかった三角社ぴえさん。このたび2冊目のコミックス購入。雁須磨子さんあたり好きな方にはまる作風なのかな。淡々と飄々と、重い話も辛い話もどこかしらさらりと笑いも取り混ぜたタッチで、そんななか所々心臓掴んでくるような切実な感情の吐露もあり、巧みです。

「まよなかにあまいかおり」「彼の左のつばさ」はいずれも血の繋がらない大家族ものシリーズ。「まよなかに〜」が三男x次男、「彼の〜」が父親x長男です。「まよなかに」はストーリー展開ほぼなしの雰囲気とネームで読ませる短編ですが、その雰囲気とネームが良いので物足りなさはありません。とはいえ「彼の〜」の方がボリュームもある分、2人の過去から現在の葛藤+いびつな家族の全体像までしっかり描かれており満足度は高いです。四男の緑も担任の先生とできており、末っ子のぴなちゃん(幼女)以外総BL (しかも家族内)なご都合設定ではありますが、特に違和感なく楽しむことができました。

絵的にもストーリー的にも『どうにかした日』の方がクオリティ高い気がしたのですが、好みの問題なのかも。ちなみに『どうにかした日』収録の「金と黒と先生と」は本作でさらっとしか扱われていない先生x緑の前日談になるので、どちらか読んで気に入ったら、もう一方も読んでみるというのが正しいのかもしれません。緑、金髪は可愛くなかったけど黒髪は可愛くて萌え萌えです。

なお濡れ場はけっこうありますが、気持ち重視かな。直接的な描写もあるといえばあるのですが、絵柄のせいもあってかそんなにエロさは感じません。ただ感情の面で訴えてくるものはあり、特に「彼の左のつばさ」の温泉旅館の夜はとても良かったです。