ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『ねくたいや』歩田川和果

「告白したの憶えてる?」「……憶えてる。どこがよかったんだ」「全体。おまえと一緒にいるとしあわせを感じる」

永瀬は同僚で同期の有働に惚れていた。告白するものの「社内恋愛は嫌だ」とあっさりフラレてしまう。それから五年――有働が独立してネクタイ専門店「ねくたいや」を開業した。永瀬は有働に会うため「ねくたいや」に通っているのだが……。

有働に片想いし続ける一途な男・永瀬(保証書付きの超ドヘタレ!)の諦めることもできない恋の行方は――!?

収録作品:「ねくたいや」「ねくたいや ことんことんと」「(描き下ろし)おまけ」+デジタル版おまけ(※1ページ漫画、「ディアプラス・コミックスおまけペーパー」とあるので配布ペーパーと同内容なのかもしれません)

感想:

スピンオフのコミックスが出たので、先にこちらの感想を書いておきます。ひょろっとした独特の絵柄で、棒状の脚(そして手足がたまにびっくりするほど長い)にはちょっと違和感あるものの画面作り含めてお上手だと思います。ただ、たまに吹き出しの位置関係が見づらい点については改善していただきたいです。

仕立て屋とか靴屋とか、この作品で扱っているネクタイ屋とか、男性特有の衣類や装飾品を扱っている作品はそれだけで好感持ってしまいます。ネクタイを絞めてあげる姿にはなんとも言えず色っぽさを感じます。明るく気い遣いで一見わんこ系な永瀬がいざとなるとふっと強引になるのもまた良し。クールで飄々とした有働がたまに見せる照れ屋で甘えたがりなところも可愛いです。

読み切りの「ねくたいや」では2人が恋人になるまでが淡々と描かれ、ハッピーだけどちょっと物足りない気分でしたが、続編の「ことんことんと(全4話)」では有働の過去や家族関係、もっと近づきたいのに距離の取り方がわからず不安になってしまう永瀬など、恋愛のごたごたも十分満喫。当て馬というか引っ掻き回し役の環もいい仕事してくれます。「恋人のこわさ」「独り占めしたいけど、自分たちは2人だけの世界で生きているわけではない」そういった感情のもどかしさを正直に吐露し合う場面は実に良かったです。結果的には受ほうがこじらせちゃってて、攻の方が健やかで天然。

濡れ場はそれなり、描写は軽めです。

 

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