ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『ジェラテリア スーパーノヴァ』キタハラリイ

出会い系で適当に知り合った間柄、知っているのはお互いのいい加減なハンドルネーム。いつも、近所にあるジェラート屋『スーパーノヴァ』で待ち合わせをして、部屋でヤるだけの関係。……だったはずなのに、少しずつ変化してしている自分の気持ちに気付く里谷。自分だけが深みにハマっていく不安……でも気付いた気持ちには抗えず――?

収録作品:「ジェラテリアスーパーノヴァ vaanilla, mojito, cassis, caramel, sakura, extra chocolate」、Renta! 限定漫画(番外3ページ)

感想:

これは良作! 話の進め方が上手い、心情の描き方が上手い、台詞のテンポもモノローグの使い方も上手い、人物はそんなに上手くないけど絵はしっかりしていて描き込みも丁寧です。

出会い系で知り合った名も知らぬ相手に逢瀬を重ねるうちに恋愛感情が深まるのだけど、どうすればいいのかわからない。主人公の大学生・里谷がそこで立ちすくんでしまう理由は、過去の失恋の傷でなければ家族関係のトラウマでもありません。異性愛者でなかったゆえに女の子に関心を持てない思春期を過ごし、即物的な出会いを求める以外を経験していないゆえに、どうやって恋愛をすればいいかわからない。ただそれだけ。ドラマチックな過去なんかなくても人は思い悩んだり戸惑ったりするし、そういう小さなひっかかりや躓きにスポットライトを当てて丁寧に描いているところにとても好感を持ちました。

エロは結構あります。割と汁気多めで、修正はトーンぼかしや修正ペンでしゃかしゃか線を入れているタイプの控えめなもの。攻にちょっとSっ気があるのがまた良かったです。けっしてエロメインの作品ではありませんが、そちらを重視される方もじゅうぶん満足できそうです。

萌えの部分で少し弱さは感じたのは作品のせいではなく、わたしの嗜好や性癖によるものなので、漫画としては言うことないです。あ、ただ多分作者さんはアナログで作業されている方だと思うんですが、電子書籍の解像度が荒くて全体的に画面が汚かったのは残念でした。スクリーントーン多めの画風なので、特に顔の影トーンが潰れている部分などはかなり気になりました。