ぬかるみ読書録

電子書籍で読んだ商業BLの感想をぬるぬると更新するだけのブログ。

『このよのはじまりこのよのおわり』たうみまゆ

幼馴染みへの恋心を自覚した、あの日から早十年――…人気女形となった佐根市は、相も変わらず幼馴染み・善介への想いを秘めたまま、“惚れた腫れたは芸の肥やし”と数多の女たちと色恋を繰り返していた。そんなある日、次の演目の役がどうしても掴めず、煮詰まった佐根市は善介の家を訪ねる。しかし、そこで彼の縁談相手だという娘にばったり出くわし――…!? さまざまな時代の儚くも粋な恋模様を緻密に描いた待望の麗人ファーストコミックス!

収録作品:「このよのはじまり」「このよのおわり」「硝子哀歌」「いずみの如く」「カラスの名前」「カムバック・スイート・ホーム」「龍の引っ越し」「(描き下ろし)おまえ百まで」、あとがき

感想:

江戸から昭和レトロまで幅広い時代を舞台にした作品を集めた短編集です。表紙がなんとも色っぽくてついつい購入。短編集ですが、なかなかの良作揃いでした。

表題作シリーズ「このよのはじまり」「このよのおわり」(+「おまえ百まで」)は、さらっとした絵柄と描きぶりにもかかわらず、艶っぽさも感じられる作品です。女形の役者・左根市と、子供に手習いを教える善介の十年愛。色気を知らない左根市が、恋愛感情を自覚することで女形として成長しながらも「心を芸に変える」ことを信条に想いを秘める苦しさ。女形攻って(別に衣装着てやってるわけではないですが)いいなあと新しい萌えに出会いました。

その他の読み切りも、明治時代を舞台にした花嫁すり替わりモノ、江戸舞台の吉原身請けモノ、ファンタジー気味の(多分)大正悲恋もの、昭和レトロ貧乏赤線もの、江戸火消しもの……と、あえて言うなら「現代以外の日本を舞台にした」作品集。短い話ばかりですがエピソードの切り出し方がうまいので語りの不足を感じませんでした。短編集としてはかなり良くできているのではないでしょうか。

すっきり整った絵も画面もきれい。あえて言うなら、頭部に比べて肩幅の狭さや体の小ささが目立つことがあり、バランスの悪さを感じました。濡れ場はところどころにありますがさらっとしたもの。この作品群にはあっさりめの描写の方が合っている気がするので物足りなさは感じませんでした。

 

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